肌寒さを覚える秋、五感に働きかけるPRこそ大きな効果を上げます。同様に、リモートワーク需要に応えるBtoBマーケティングトレンドは「体験」追求型に進化しています。国内外の取材をもとに、PR観点で注目したい最近のマーケティングトレンドを紹介します。
アカウントベースドの発展
振り返るとおよそ5年前、2016年の年末には次世代マーケティングプラットフォーム研究会でアカウントベースドマーケティング(ABM)を取り上げました。当時のハフポスト掲載 デジタル経済のなかで企業はどう信頼(再)構築できますか? でまとめたABMのポイントは以下の3つです。
1. ABMは企業対個人取引(BtoC)における顧客生涯価値、顧客関係管理(CRM)の概念を、企業対企業取引(BtoB)に当てはめたもの
2. ABMは、訴求対象を企業名、部署名、役職名まで名前レベルで落とし込んで働きかける。全社的なデータマネジメントが要
3. ABMの導入は、従来の見込客の獲得・育成、受注のプロセスを劇的に効率化、多角化、高次化する。営業とマーケティングの連携を必須とするため、組織改革につながる
さて、今日までの、とくにこのコロナ禍における大きな変化を受けて、ABMも進化しています。ABMアプローチへの投資が増え、体験に着目した戦略と戦術を体系立てて実行するABXモデルへと発展しているのです。詳細はMarkeZine掲載 ABMに続くモデル「ABX」を解説!マーケィングの焦点をアカウントの量から「経験」に移行するで紹介しています。
3拠点取材で明らかになったグローバルトレンド
今回の取材で興味深かったのが、グローバルトレンドの連動でした。オーストラリア、イギリス、日本の3拠点で取材したSitecoreは、「シームレスでパーソナライズされた関連性の高い”コネクテッドエクスペリエンス”を各顧客に提供する」という全社ミッションに基づいて、収益を生み出すチームを部門横断的に連携させ、「組織全体の成長とイノベーションを加速させる戦略的なイニシアチブ」をABX戦略と位置づけています。
同様の動きは、1886年設立、世界100カ国以上で16万8000名人以上のメンバーを抱えるCPA Australia(オーストラリア公認会計士協会)でも進んでいました。コロナ禍の今こそ従来のBtoCビジネスに加え、アカウントベースドのアプローチによってBtoBビジネス強化に乗り出しているのです。
公認会計士の成功を支える生涯学習やサポートを提供するCPA Australiaでは、メンバーが所属する組織というアカウントごとに、エクスペリエンスを最適化することで、BtoBの収益強化を実現するABM/ABXモデルを導入していました。まず6カ月でアカウントモデルの社内連携のシステム設計と構築を行い、今年2021年2月から組織横断的に導入。「アカウントベースドの活動目的を共有し、教育を通して組織変革を実践している」とオーストラリア公認会計士協会アクイジション担当ジェネラルマネージャーのMarianne Dodd氏は述べていました。
同協会は、CFOなどの要職に就くメンバーが、所属する企業に大きなインパクトをもたらすことができるよう、財務部門レベルもしくは全社レベルで有用なコンテンツを、最適なタイミングで提供しています。社会的地位の高い公認会計士の価値を、企業として実感してもらえるように、マーケティング、パートナーシップ、ビジネスサポートチームが連動して各企業向けにカスタマイズしたキャンペーンを実施しているのです。
「ABM、ABXともにいかにテクノロジーを使い、組織に横ぐしを指してマーケティングをパーソナライズできるかがカギ。それが組織の進化の過程であり、大きなマーケティングトレンド」と述べるDood氏。同協会が、コロナ禍中にマーケティング活動を企業向けに広げ、その成果を財務成果にひもづくKPIで効果測定し改善を図る柔軟性に、歴史ある組織が成長するためのあるべき姿を見たように思いました。