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消費者の自己超越とは?「パンデミックで変わるマズローの法則」

コロナで消費はどう変わったか。PR会社、広報、広告に欠かせない視点です。ロンドン・インペリアル・カレッジ 教授、サンドラ・ヴァンダーメルウェ氏が、世界60万人が視聴したワールドマーケティングサミット eWMS2020にて、南アフリカ、ケープタウンから最新の「ネクスト・ノーマル・カスタマー」論を発表しました。

ロンドン・インペリアル・カレッジ 教授、サンドラ・ヴァンダーメルウェ氏

マーケティングとサービスを研究するヴァンダーメルウェ氏は、アイルランドのデイビッド・エリクソン氏とともにAcumen | Next Normal Customerをまとめました。 「第二次世界大戦、SARS同様に、コロナ下で消費者は画期的に変化している」「新しい消費にきちんと応えるブランドがヒーロー効果を生んでいる」と見ています。

その事例がUniversal Picturesによるトロール(Troll World Tour)のオンライン配信です。この4月、コロナで外出できない子ども達から圧倒的な支持を得て、通常の劇場上演を大きく上回る成功を収めました。

新しい消費行動を生んでいるのはテクノロジーではなく人間そのものです。「パンデミックがもたらすのは悲劇や混乱だけでない。イノベーションを加速し、新しいモデルを形作っている」と述べます。

フィリップ・コトラー氏が唱えるマーケティング5.0は、アブラハム・マズロー「人間の欲求5段階説」の頂点「自己実現」と結びついています。ヴァンダーメルウェ氏はコロナ下の各欲求を分析し、さらにその先「自己超越」による利他に注目します。

パンデミックで消費者の欲求が変化、マズローの法則は「自己超越に」移行

今日の「生理的欲求」には生存に必要なもの、サプライチェーンが含まれます。スマートフォンの世界的普及により、「アクセスが可能であれば所有する必要がない」「欲しいときに利用できるオンデマンド型」という消費の特徴があります。

不測の事態における「安全欲求」とは、パンデミックに関する必要な情報があり安心していられる状況です。感染拡大防止というリスク管理によって、心理的な落ち着き(レジリエンス)を得られます。

社会的欲求」は同じ興味関心の人とのつながりを指します。ソーシャルディスタンスが必要な今、オンライン化が顕著です。消費者は生活や職場における居場所、自分をサポートしてくれる人とのネットワーキングを確保し、オンラインで意見、アドバイス、レビューを交換しています。

承認欲求」についてベビーブーマー世代は、一定の服を身につけ、車に乗れば社会的ステータスを示すことができました。しかし今の消費者は違います。人生の目的、理想、意味に合致するブランドを支持し、自分と同じ価値観、インスピレーションを感じるブランドを選ぶのです。

自己実現」とは自分の可能性をフルに開花させることです。運命を切り開き、ゴールに向かい、逆境と戦い、独り立ちしていられることを指します。やり続ける力と向上心を伴います。

では「自己超越」とは何でしょう。それは「自分以外の人のことを考えること」です。パンデミック下の自己超越トレンドには、勇気を出して最初の一歩を踏み出した「先駆者への賞賛」という共通項があります。ケアが必要な人を支援するエッセンシャルワーカーが新しいヒーローになりました。人類と地球を守る取り組みが支援され、ブランドやコラボレーションの輪ができたと言えます。正しいことを正しく行う、という姿勢はデジタルでつながり、消費者一人ひとりがムーブメントに参加、貢献する潮流が生まれています。

こうした世界的な傾向を踏まえ「消費者はもはや低次の欲求にとどまっていない」と主張。ネットワーキングの欲求から会議システムのZoomやオンラインゲームのFORTNITEが急成長。Coursera、iTalkなどのオンライン学習も伸び、消費者のイノベーションへの適応の早さが明らかになりました。またTikTok、Instagram、YouTubeといったソーシャルメディア、カジュアルなワークウェアなどのファッションが、消費者の自己肯定を満しています。

自己実現の手段として、Fitbitなどのウェアラブル端末による健康管理、3Dプリンティングによるホームロボティクス需要が高まりました。また、消費やエネルギー排出を最低限に抑える住居や生活が支持され、移動はMaaSの共有型に移行しています。

「自己超越」を示す新しいプロモーションとして、これまでの1個分の料金で2個もらえる「Buy 1 Get 1 Free」ならぬ、自分の消費を他の人に役立てる「Buy 1 Give 1 Away」がみられます。そして、衛生のために人込みを避ける「自己隔離」が新しい社会規範になると言います。

配慮ある消費として、セカンドハンドやレフィルがみられます。Appleは自社認定の整備を経た新品同様の製品を提供。炭酸水はプラスチックボトルでなくソーダストリームの購入に切り替わりました。

今や消費者が社会を変える時代。ブランドには良心と志が求められています。

運営者情報
共同ピーアール株式会社

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