新年を迎え、パンデミックが塗り変えた常識を昇華させる時です。 9月には行政のDX推進の司令塔となる「デジタル庁 (仮称) 」が始動する日本と、周辺のアジア太平洋地域(APAC)で、テクノロジーの未来はどう展開するでしょう。PR会社でも広報、広告をデジタル化する肝となるデータ事情を俯瞰する必要があります。 Veeam Software 製品戦略チーム シニア・グローバル・テクノロジスト、アンソニー・スピテリ氏を取材しました。
「バックアップは保険」という概念が変わりつつあります。デジタルで世界がつながる今や、バックアップはシステムやデータの命綱になったと言えるでしょう。日本取引所グループ(JPX)傘下の東京証券取引所は昨年11月30日付けで、バックアップ不備、システム障害による株式売買の終日停止を受けた社長交代を発表しました。
東京証券取引所 新社長に暫定就任したJPXの清田瞭CEOは記者会見で、「ネバーストップ(システムが止まらないこと)だけでなくレジリエンス(回復できること)が必要」と強調。これこそ、データのバックアップ(複製)とリストア(復旧)の両軸が必要であるゆえんです。バックアップを取ったらデータが戻ることがDX成功の最後の砦です。
中国が指標になるアジアのトレンド
キャッシュレス、非接触、ビデオ、オンラインなど、あらゆるテクノロジーがデジタル化しています。クラウドデータの移動、高い可用性が求められる時代です。
中国はいち早くモバイル決済を導入し、WeChat(微信)をはじめとするアプリベースのエコシステムや、Pinduoduo(拼多多)プラットフォームのような新しいオンラインコマースモデルが生まれました。また中国の銀行は、リモート・オンボーディングやeKYC(electronic Know Your Customer)などの電子本人確認を活用して、市民が香港にいなくても口座開設や株取引、金融取引を可能にしています。
「中国の決済と電子商取引におけるイノベーションは、アジアの未来をけん引する」とスピテリ氏は述べます。
広がるデジタルトラストの可能性
データプライバシー、デジタルID、データ保護への注目度が高まっています。その例として日本やシンガポール、香港のCOVID-19接触確認アプリ、追跡システムを可能にした一連のトラック&トレース技術が挙げられます。AIやIoT、GPSの進歩により、個人が自宅環境から動いたかどうかを特定し、仮想的なフェンス(柵)を作る仕組みのジオフェンシング技術も実現しています。
中国では顔認証や先端センサー技術が、いずれも高い効果を発揮しています。一方で、オーストラリアではデータのプライバシーや信頼性をめぐる議論が白熱。スピテリ氏は「アジアのデータに対する信頼度は、欧米諸国に比べて相対的に高い」「ポストコロナに向けてAPACで、デジタルIDとデジタル生体パスポートの迅速な開発が進む可能性がある」という見解を示しています。
デジタル統合が突き動かす社会
これからアジア太平洋地域(APAC)は、世界のGDP成長率をけん引すると予想されています。また世界経済フォーラムの調査は、今後10年間に経済で創出される新たな価値の60~70%が、デジタルプラットフォームによってもたらされると予測しています。スピテリ氏は「APACでは、よりシームレスなビジネス連携と、レジリエンスを実現するために、より広く、より緊密なビジネスと政府のデジタル統合が必要になる」と述べます。
日本では、 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室において、デジタル庁の創設に向けてプロジェクトの推進にあたる民間人材の募集 が始まりました。ビジネスと行政が足並みをそろえてDXを加速するためには、データのレジリエンスつまり回復力と、クラウド間の移動、保護、可用性を確保する管理が必要不可欠です。
若いアジア各国の中で、少子高齢化、労働力不足といった独特な課題を抱える日本。海外の成功事例からの学び、そして未来の可能性を広げるクラウドデータ活用に期待が高まります。
取材協力:ヴィーム・ソフトウェア株式会社
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