コロナウイルス対策で外出が制限される中、さまざまなコミュニケーションがデジタル、ビデオに変わっています。こうして手法やツールが新しくなると、不慣れなことが出てきて当然。だからこそ、なんとかうまく伝わるようにしたいところです。
そんなときに役に立つプレゼンの極意が、早稲田大学大学院(WBS)にて開催の「リップシャッツ信元夏代さんに学ぶ世界で勝てるプレゼン術」講演会で紹介されました。 参考:IABC APACウェビナー 録画:YouTube スライド:SlideShare
MBAによるプロスピーカー講演
リップシャッツ信元夏代氏は、ニューヨーク在住の事業戦略コンサルタントであり、プロフェッショナルスピーカー。『20字に削ぎ落とせ』(朝日新聞出版刊)を上梓しています。(近日 「ストーリーに落とし込め 世界のエリートは自分のことばで人を動かす」(フォレスト出版)発刊予定)
今回は、経営修士(MBA)在学中*のウーマンズ リーダーシップ インスティテュート代表取締役 川嶋治子氏が、「コミュニケーションは、ビジネスリーダーに必要な武器。だからこそ体系だった講義が必要」と考え、個人主催という形でこの講演会を開きました。*取材当時
ワンビッグメッセージが頂点
リップシャッツ氏はまず、「かつてはわたしも、自己紹介すら苦戦していた。スピーチのコーチングを受けたのをきっかけに変わった」という自身の体験談を紹介。スピーチにより聞き手と心がつながる、聞き手が動いてくれる、というコミュニケーションの醍醐味を話しました。
伝えることは1つに
まず、明日から使えるプレゼンの鉄則その一は「伝えることは一つに絞ること」。英語なら10文字、日本語では20文字以下に絞り、聞き手に直球で伝える「ワンビッグメッセージ」が必要です。
そしてそれを伝えるためには、聞き手の共感を得るストーリーを作るロジカルシンキングが必要。そこに7割の時間を割くことを提唱しました。ロジカルといっても論理だけでは人は動かないもの。そのため、エトス、パトス、ロゴス(倫理、論理、情緒)を交えることで、心に響くストーリーになります。
相手を動かすためには、ワンビッグメッセージを支える、根拠、理由、背景の情報が必要です。これらは詳細を構成するメインポイントと呼ばれ、3点選ぶのが最適です。ワンビッグメッセージと3つのメインポイントが、So What (だから何なのか)、Why So(なぜそうか)の観点で必ずつながっていると、ロジカルかつ飛び、抜け漏れがない、伝わるスピーチが完成。
ワンビッグメッセ―ジを頂点としたストーリーのピラミッド構造が、スピーチ成功の秘訣です。
オレオレスピーチNG
鉄則その二は、「主語を聞き手にすること」。自分が教える、ではなく、あなたに持ち帰ってもらうこと、と視点を変えることで、相手にとって話が自分ゴトになります。「オレオレスピーチからの脱却」が重要です。
KISS(シンプル、具体性)
その三は、「話をシンプルかつ具体的に」‟Keep It Simple and Specific”というKISSの法則を紹介しました。ユーモアが好まれる英語のスピーチ場面では、シンプルかつこっけいに(Keep It Simple and Stupid)などともいわれますが、ビジネスでは具体的になにかを特定する伝え方がベスト。
「カタカナや専門用語が多くなって難しくならないよう。小中学生でもわかるぐらいのシンプルさ、イメージできるぐらいの具体性を」と呼びかけました。
売り込みNG
その四は、「売り込むべからず」。作り手の視点で商品の特性を延々と述べるのではなく、使い手が「知りたい、聞きたい」と思うような、情緒的価値を作り出そう、と提言しました。
成功話NG
最後にその五は、「成功話にフォーカスしない」。「あの人はすごいからできること、自分には関係ない」「あの会社だからできること、自社では無理」などと思われて聞く耳を持たれなくなることを避けるよう、注意しました。自分ゴトにする、という上述の二ともつながります。
共感される4つのFとして、失敗(Failure)、不満(Frustration)、First(初めて)、Flaw(欠点)などを共有することで、聞き手とつながれるのです。
最初のインパクトが肝
最後に、「人は、相手が話し始めたら7秒でその人の印象を捉え、30秒で話が面白そうか決める」という、7秒・30秒ルールを紹介。
そのために、スピーチは最初にインパクトを、と訴えました。
以上、充実した60分は、問いかけと回答、ワークショップの連続。
心地よい緊張感と、著者サイン入りの書籍プレゼントで高揚した教室は、学びの刺激を受けて盛り上がる社会人で講義後まで熱気があふれていました。わたし自身、来たるIABC APACスピーチに活かすプロの技を吸収した貴重な1時間でした。
参考:IABC APACウェビナー 録画:YouTube スライド:SlideShare