共同ピーアール総合研究所(PR総研)は、報道関係者を対象にSDGs広報に関するインターネットアンケート調査「SDGs広報 2020年の振り返りと2021年の展望」を実施しました。136名から回答をまとめ、記者発表会を実施しました。
■ 調査期間:2020年12月18日~2021年2月11日
■ 調査の対象:テレビ・新聞・雑誌・ラジオ・Web等、報道関係者(内、136名より回収)
※ 本調査中の「SDGs」は、一般的な「持続可能性」に加え、ESG投資や共通価値創造(CSV)など「SDGs」を必ずしも用いない取り組み、発信を含みます。
【調査結果の概要】17ゴール達成見通しは「2分の1」以下が8割
SDGsの有効性
● 2030年までの目標として有効である 83.8%
一方、2030年までの17ゴールの達成見通しは、「2分の1程度」以下とする選択が8割
コロナ禍が、SDGs達成の妨げに
● 日本での影響
「1.貧困撲滅」、「2.飢餓撲滅」、「3.健康と福祉増進」、「10.不平等解消」の4項目で、『達成から遠のいた』 6割超
一方で、『達成に近づいた』評価では、「9.産業と技術革新」項目が 32.4%でトップ(但し『達成から遠のいた』 が33.1%)
● 全世界での影響
「1.貧困撲滅」、「2.飢餓撲滅」、「3.健康と福祉増進」、「10.不平等解消」の4項目に加え
「4.質の高い教育」、「8.経済成長」の計6項目で、『達成から遠のいた』評価が6割超
2020年の振り返り
● SDGsに関する企業・団体からの情報発信は増加している 80.1%
● 17ゴールのうち優先して発信されている項目は、「7.エネルギー」、「5.ジェンダー平等」、「13.気候変動対策」
● 最も印象に残ったニュースは、「2050年カーボンニュートラル宣言」、「ガソリン車販売全廃」
● 取材する機会が多かったと感じる分野のトップは、「7.エネルギー」分野
2021年の展望
● SDGsに関するニュースは「増えると思う」 86.8%
● 注目分野
全体では、保健福祉、経済産業、環境系のウェイトが高いが、メディアにより志向は区々
- テレビは「3.健康と福祉」、「5.ジェンダー平等」に注目
- 新聞は「8.経済成長」、「13.気候変動対策」、Webも最多は「13.気候変動対策」
● 注目キーワード
全体では「DX」および「withコロナ/アフターコロナ」、「地方創生」を3割以上が選択
媒体別では「地方創生」(新聞)、「貧困」(雑誌)、「循環型社会」(同)、「ジェンダー平等」(ラジオ)のウェイトが高い
● 企業や団体によるSDGsの取り組みについては、今後さらに積極的に「取材したい」 70.6%
● 特に取材したいもの
1位は「商品・サービスや製造プロセス等にSDGsを採り入れる取り組み」、次いで「トップ・マネジメントの考え方や戦略」
● プレスリリースなどの広報活動で重視する要素
1位は「ファクト(取り組みの事実)」が66.2%、次いで「固有性(独自性・先進性)」 27.2%、「経済性(マーケット・ビジネス価値)」が26.5%
SDGsの現状と今後:広報活動に対する意見(記述式、一部抜粋)
「企業PRに使うのではなく、本質的なSDGsに取り組む企業が増えていってほしい」(40代女性・WEB・ビジネス・編集)
「取り組みを始める時の企業リリースは多いが、進捗や結果についての情報公開が少ない。成果が見えづらい。」(30代女性・テレビ・総合・記者)
「一過性のバズワードにならないと良いと思う」(40代男性・WEB・アート・ライター)
「SDGsという言葉だけが先行している。あまりSDGsという単語を使わずに伝える手段を模索したい」(40代男性・雑誌・産業・企画)
「先進企業として、PRがうまいところ、テレビCMも使って露出しているところがよく浮かぶ。ファクトとして取り組みを進めていることとは切り分けて考えるべきだと思うが、情報収集が難しく、取材先を選ぶのが難しい」(20代女性・WEB・ビジネス・記者)
【考察】一過性でなく、商品・トップマネジメント・ファクトを
報道関係者の取材姿勢は積極的だが、発信の仕方を模索
報道関係者は、SDGsの2030年までの達成には懐疑的でありながらも、日々情報を取捨選択し取材している状況(SDGsという目標設定自体は有効と認識)にあり、今後の報道姿勢も積極的です。一方で、これまでの流行と同様に、SDGsも一過性のワードとなることへの危惧、話題先行型の現状に対して報道のあり方、伝え方を模索しているとの意見もみられました。
SDGs広報に求められていること
① 商品・サービスや製造プロセス等にSDGsを採り入れる取り組みがあること
② 企業・団体のトップマネジメントが確固たる方針を打ち出し、自らの言葉でわかりやすく語ること
③ 固有性(独自性・先進性)のある取り組み(ファクト)を示すこと
④ 「取り組みの発信」だけでなく、「成果の見える化」にも努めること
報道関係者が今後、注目するキーワードとして、「DX(デジタル トランスフォーメーション)」、「withコロナ/アフターコロナ」、「地方創生」、「貧困」、「循環型社会」、「ジェンダー平等」などが挙げられました。
このため、これらに紐づけた①~④の発信は報道関係者の目に留まりやすく、有効なPR/IRに繋がる可能性が高くなります。
注目度が低い項目こそ、PRパーソンの手腕が問われる
報道関係者が着目しやすい項目と、必ずしもそうではない項目があることは確認できましたが、注目度が低い項目はすなわち重要性が低いというわけではありません。むしろ、こうした項目についてこそ光を当てる知恵と工夫が情報発信者に求められ、目標への取り組みとともに成果も適切にアピールしていくことが必要です。
消費者・生活者の行動変容を促すようなPRが、SDGs推進力を高める
SDGs推進の観点から、消費者・生活者サイドは、企業・団体から発信される情報を賢く読み解き、企業・団体に適切な行動を促すような行動をとる(変える)ことで、持続可能性の向上に寄与することが期待されています。
こうした点を踏まえ、報道サイドや、報道との接点に位置するPRパーソンは、問題意識が広く一般に浸透するよう、PRの質的向上にさらに努める必要があります。それとともに、行政機関も報道機関の特性を踏まえた情報発信を心掛けるなど、全体としてSDGs達成に向けた推進力を高めていくことが求められています。
※ 回答者の属性、設問、プレスリリースおよびプレゼンテーションデータは PR総研 オンラインプレスルーム にてダウンロードいただけます。