初の無観客形式となった東京五輪、各国代表の選手たちの挑戦は、勝っても負けてもドラマを生みます。 テニスプレイヤーの大坂なおみ選手は、先立つ全仏オープンの棄権ならびに鬱を発表し、療養を得ての参加となりました。 開会式で栄えある聖火リレーの最終ランナーを務めた後、 女子シングルス3回戦で敗退しました。
Z世代を代表する世界的スター選手の鬱の告白は、メンタルヘルスの重要性を再認識する大きなうねりを生んでいます。国際プロサッカー選手会(FIFPro)のアンケート調査によると、現役サッカー選手の38%、元選手の35%が鬱や不安障害に苦しんだと回答。一般人の回答が、オーストラリアで13%、オランダで17%であるのと比較すると明らかに高く、競技は違えどプロ選手のメンタルヘルスの課題が明らかです。
スポーツ選手しかりアーティストしかり、報道される側もする側も、衆目にさらされる、あるいはさらすという、神経がすり減る仕事をしています。これはPRも同じくです。
イギリスのCIPR State of the Profession 2019調査では、1500人のPRパーソンの5人に1人(21%)がメンタルヘルス障害と診断され、23%がストレス、不安、鬱により病気休暇を取得しています。オーストラリアのNever Not Creative & Everymind, Mentally Health research 2018調査では、クリエイティブ、メディア、マーケティング分野の1800名中、56%が鬱症状を覚えており、全国平均より20%高い結果となっています。
日本パブリックリレーションズ協会は6月3日、「これからのパブリックリレーションズ・プロフェッショナルに求められること」と題した特別講演を開催しました。進行のPRSJ副理事長 鈴木孝徳氏は、今後パブリックリレーションズ・プロフェッショナルに求められる資質として「ナラティブ・アプローチ力」、「Key Opinion Formerとしてのファシリテーション力」、「Social Dynamicsのマネジメント力」の3点を紹介。
登壇した一橋大学大学院 経営管理研究科教授 阿久津 聡氏は、PRのプロを臨床心理学のセラピストに例えて「典型的な感情労働者」と表現し、「感情抑制が必要になりストレスがかかる、鬱になりがちなので組織としてのサポートが必要」と述べました。
コロナ下の今、すべての組織がなだらかにつながっています。その中には上下や貧富、ジェンダーなどによるはげしい分断もある矛盾だらけの世界。だからこそ、頂点を極めるトップアスリートや、芸術を生み出すアーティストが生み出す、人々を勇気づける力が必要とされています。それを共感そして文化に高める発信力を持つのが、PRやメディアなどの産業でしょう。
不安を抱えて生きることは尊い命をまっとうすることです。
自分を大切にし、職務に向き合いながら痛みを癒し、未来に向かいましょう。
PR会社は社会の成長のためのパートナーなのです。