コロナで夜の外出を控えるなか、TBSドラマ「半沢直樹」が空前の人気を集めました。PR視点からのテレビ、そこに描かれる男女の役割やジェンダーに注目してみましょう。
高いテレビの壁
PRにおいてテレビは、大衆に訴求できるメディアです。テレビという箱、コンテンツ、ビジネスモデルの結晶には、世相を映す独特なパワーが宿ります。 巨大チームが作り上げる番組には、膨大なエネルギーと細部までのこだわりがつまっているのです。
ニュースにはまず、視聴者を惹きつける絵が必要。どんなに企業側が自社情報をアピールしようと、人の目に留まる、心を動かす映像が取れなければニュースになりません。
政治家などの定例会見は、作り込まれた原稿と、発信する人物の人となりが一体となりメッセージを醸し出します。前後の報道とともに、ニュースを読むカギが隠されている。どの政策も支持されるかどうかは、こうしたコミュニケーションの成果の表れです。
謝罪会見は、我々PR会社にとってよもや明日は我が身。準備したチームの痛みをヒリヒリと感じとりながら、ひと言ひと言、一挙手一投足を学びのために情報を蓄積し分析、脳裏に刻み込みます。
さらに高い見えない壁
挑戦作といわれるものを別にしてテレビでは、 家族や社会を描くときに往々にして、「男は上(管理)と外(会社)」、「女は下(事務)と内(家庭)」という分断が「常識」。テレビドラマにもその前提が現れています。
ここで、情報流通により世の中を良くするPRを職務にするなら身に付けておきたいスキル。それは「多様な視点を探し出す力」です。
立命館アジア太平洋大学(APU)出口治明学長は、ジェンダーギャップ会議「多様性のある組織が勝つ! 女性リーダーを増やす企業の戦略」 で『男女平等』の落とし穴を指摘しました。(関連記事)
なぜなら男女平等は「人を男と女に二分する抑圧的思想」だからです。男、女以外の多様性を排除する、幼いころからのすり込みの危険さにハッとします。そして、紛れもない政治経済、社会生活上の女性差別を飲み込みながら生きている現状のゆがみに、気づかされます。
そんな日本人男性の世界を持ち上げない、疑問を投げかける放送作家たむらようこ氏の視点に目を向けたい。「半沢直樹」に関しても筆の鋭さが冴えます。ケンカも辞さない鼻息の粗さと、クスリと笑わせる絶妙なバランス感覚が魅力にあふれています。
脱PRのフォーマット議論
PR業界にいると、そもそもPRとは広告か広報か、といった内向きなフォーマット議論をしがち。しかしコミュニケーションの本質はそこではないはず。
私たちが見えていない重要なこと、知られていない価値あることに光を当て、成長しながら社会を良くするのがPRの仕事です。
新しい生活様式とともに価値観が変わる今。自分にない多様性を取り入れ、PR脳をバージョンアップする好機到来です。
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