コロナ時代の広告と広報
 
 

コロナに伴い、さまざまなコミュニケーションが対面からオンラインへ移行しています。医療や学校はもちろん、飲食やエンターテインメントまで、これまでと異なるコンテンツとそのデリバリー(配信)が必要です。この折に就職、転職してコミュニケーション職に就いた方もいるでしょう。そこでビジネスコミュニケーションの基礎、広報と広告の今を見てみましょう。

健康と栄養素の関係

企業コミュニケーションを捉える上で、広報と広告の違いの理解は、日常業務の土台です。同時に、その仕事をしていない人にとっては、違いが分かりづらいかもしれません。

例えば、「PR会社って何をするの?」と聞かれ
「広報支援、つまり情報発信によりメディアを通してメッセージを伝える仕事」
と答えると、たいていの反応は
「それはつまり広告ですね」
と、やや、ちぐはぐな会話になります。

なぜなら、受け手にとっては、広報でも広告でも、企業がなにかを発信している、という受け身であることに差異はないからです。

では何が違うのか。それはまず発信する「情報経路」です。おおまかには、

・広告は、企業がコンテンツ、メディア、デリバリーまでコントロールして広告出稿

・広報は企業が一次情報を作成、メディア向けに配信、コントロールできない第三者に選別されてニュースとなり伝達

と異なります。

それぞれのコンテンツは独自の予算を持ちます。広告は人件費が基本ですが、広告には広報の10倍、100倍もの費用が必要です。

とはいえ、生活や仕事をする上で情報を得るうえで、それが広告か広報かは、自分の血肉になればどちらでもよい、というのが消費者の心理でしょう。毎食美味しく食べられるなら、自分の取っている栄養素を厳密に細かく分析するのに手間を割く必要を感じないのと同じです。

とくに、外出をなるべく控えてソーシャルメディアとの接触が増える中で、コンテンツが広告か広報かは、意識に上らないかもしれません。また、広告が出てきたら飛ばす、が習慣化していたらそれ以上、違いを考察しないのではないでしょうか。

ならばなぜ、プロであればこうした違いを知っておくことが必要なのでしょう。

経路の違いによる「信頼感」と「嫌悪感」

広報活動は、企業の日常の根幹にある、ミッション、ビジョン、パーパス、バリューなど経営理念を、できるだけ絶えず発信していきます。その手段が、プレスリリースや記者会見などの一次情報発信です。

広報ではあわせて、信頼されるメディアと良好関係を築き、オウンドメディアやSNSなどのソーシャルメディアを育てて初めて、情報伝達が完成、受け手に届きます。よって、ニュース素材がなく情報発信ができない時は、こうしたメディア・リレーションズ®活動を行うのが広報の基本です。※® 「メディア・リレーションズ(Media Relations)」は、共同ピーアールの商標登録です。

広報は情報伝達に二度手間、三度手間が必要ですが、ウィンザー効果と呼ばれる「第三者の評価による信頼構築」につながります。

広告ももちろん、広報同様に経営理念に基づいたものであることは揺るぎません。ただしその手段は、上述のとおり莫大な予算をかけて広告のクリエイティブを作り、インフルエンサー、タレント、マスコミ、ソーシャルメディアなどを巻きこみ、一定期間の間に消費にダイレクトに影響するように作り込まれます。そして、発信者の意図に沿って 直接的に伝達されます。

つまり受け取り手は、それまで自発的に見ていたコンテンツを遮られ、一時的に広告を見せられます。だからこそ、広告に嫌悪感をもつ消費者意識をくみ取り、広告が邪魔にならない作り方、出し方が常に工夫されています。 とくにソーシャルメディア広告では、枠の使い分け、効果測定を含め素早く巧みなPDCAを回しながら運用されています。

なお、マスメディアを巻きこみ予算規模が大きくなればなるほど、広告と広報は両輪、いわば表裏一体となります。

広報は食事、広告はサプリメント

広報も広告も企業メッセージである点は一緒。マーケティングやブランディングの目的に沿って、何を達成するためにはどの手段をどの予算配分でどう配備するかを、細かく設計するのが担当者の腕の見せ所です。だからこそ、コミュニケーションを職務にする上では、違いの理解、効果測定、改善の積み重ねを求められるのです。

予算が少ない広報活動は、日常の食事のようなもの。日々の身体を作ります。一方で、大型予算をかけて投じる広告は、サプリメントもしくは薬、あるいは時に手術のような特別措置と考えたらよいかもしれません。

コミュニケーションは企業の体力をつける手段です。広報と広告、その違いを理解して、自社にとっての最適解、ベストプラクティスを探しましょう。PR会社はそんな企業の情報発信を支える裏方なのです。

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