コロナ時代の危機管理広報
 
 

コロナとともに、世界のPR風景も様変わり。ビジネスを止めないようにデジタルでつながり、時差や国境を超える工夫をして、新しい時代を模索しています。8月19日には、 IABCジャパン・ 共同ピーアール総合研究所(PR総研)共催日本特別セミナーオンライン開催します。その準備運動を兼ねて、 最新のグローバル危機管理広報のポイントを見てみましょう。

 危機管理を担当するのは誰?

パンデミックは言うまでもなく、障害や不祥事など多くの危機は、ネガティブ報道を呼びます。これは国や企業の信頼失墜、評判低下をもたらし、運営継続を困難にします。よって、さまざまなメディアを介した社会との信頼関係のためのコミュニケーション活動全般、Public Relations(PR)の一部に位置づけられます。

多くの組織や企業にはPR担当の部署や担当者が置かれ、危機管理はリスクマネジメントと呼ばれてプロジェクト化されます。具体的には、有事に備えたトレーニングやマニュアル策定などを行います。

危機管理では、まず脅威を理解するリスク分析が必要です。業種によって異なるビジネスリスクの他、従業員の人的リスク、金融リスク、自然災害、またサイバーアタックによるITおよびデータリスク、第三者の介入による情報リスク、SNSの炎上リスクなど様々な危険性の把握が第一報です。自らのステークホルダーが誰かによってリスクを特定し、優先順位を分析します。

そして対応に必要な項目として、障害発生時の連絡先、意思決定権者のリスト、社内通知および対外発信の流れと発信窓口、外部専門家や監督官庁への連絡の流れと担当窓口、などを洗い出します。整理してマニュアル等に明文化、「形式知」にして共有します。気をつけなければならない点は、決して「形骸化」しないこと。一人ひとりの自分事になるよう、トレーニングを通して浸透させます。

危機管理においては人事、法務、ITなど様々な部門との連携が重要です。危機管理は、社会的責任を担い互いを思いやる、サステナブルな企業文化づくりの攻めの一手にもなります。

グローバルPRの落とし穴

広報部門が比較的大きな日本の大企業の場合、PRは内製して エージェンシー(PR会社) を使わないこともよくあります。逆に外資系企業の場合は、本社のメッセージをローカル(日本)に浸透させるためのプロとして、PR会社をほぼ必ず入れます。

一般的に担当する外資系企業では、日本の広報担当者は0~1人とごく少人数です。そのため、シンガポール、香港、アメリカ、イギリス等にある本社からのPR業務は、多くの場合エージェンシーに委託しています。危機管理に関しても同様に、本社のガイダンスが徹底されます。時間の制約がある中で、対外的な発表はローカリゼーション(翻訳、日本語化)して配信する他、日本の記者から読者にきめ細かく伝えられるよう、コミュニケーション戦略を立てて動きます。

ここでも、文化の共有が非常に大切です。社外のプロが自社に自発的に協力してくれる一番のファンになっていたら、危機管理も心強く乗り越えられます。逆に、外部からも信頼されていない企業は、積もうにも金がない、買おうにも心は買えない、といった社員の個人レベルのリスクすら負ってしまいます。

言語の壁を超えるカギ

日本の危機管理がセンシティブなのは、極めて高い言語障壁と、同質・同調的な文化とのバランスです。グローバル企業のトップはほぼほぼ日本語を話さない日本に居住していないのが一般的。そのメッセージに日本ローカルの社長の言葉を共鳴させ、日本に受け入れられるようにするには、志、信条、信念といった人間のソフトパワーが問われます。もちろん、プレゼンテーション、衣装選びなどで本来の良さを最大限にするトレーニングはできますが、人間性は一夜で築くことができないからです。

またPRの現場では、翻訳で時間をロスすることが多い点を、肝に銘じたほうがよいでしょう。さまざまなステークホルダーを抱えるグローバル企業では、PR担当者が一人で日英とも最終化して発信できるようなシンプルなフローはあいにく成り立ちません。たいていは社内外の関係者から「翻訳のトーンが違う」「流れがスムーズでない」「文書がヘタ」などという主観的な意見が出たり、「追記しました」といって文法的にも文調面でもそのまま採用できない文章が加えられたりする、というのが生じるのは日常茶飯事です。これは ある程度 、関係各位の慣れとチームワークにより、問題解決の時間を短縮できます。

こうした翻訳の違和感を吸収するコツは、「それが翻訳である(母国語と違う)と理解すること」「その背後にある真意を理解すること」「それを自国の文脈に置き換えること」です。

こうしたマルチカルチュラル(多文化)の考え方は多様な人、環境と接することで身につけられます。多様性を資産にするいわゆるダイバーシティ&インクルージョンの取り組みが、危機管理に大きくかかわるのはこのためです。こうした人間の違いをPR上の強みに昇華できるのです。

翻訳をめぐる違和感は、人を傷つけないように落ち着いて、しかしはっきりと伝えることで、言葉の積み重ねを通して真意を共有できます。こうしてようやく、同じメッセージをそれぞれのステークホルダーに真摯に伝えられるようになります。

危機管理には暗記したらOKというような教科書はありません。自分自身と組織が、反射神経的に協力し、社会に資する方向に歩んでいくための挑戦がリスクマネジメントです。危機管理を成長に導くための、文化とプロトコル(言語)作りが未来を拓くでしょう。

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