マーケティングのサイロを壊せ

マーケティングのサイロを壊せ
 
 

ワールドマーケティングサミット東京2019 最後のパネルディスカッションは、フィリップ・コトラー氏、デービッド・アーカー氏、川上智子氏がパネリスト登壇。モデレーターを、リューベック大学 教授、マーク・オリバー・オプレスニク氏が務めました。

VUCA時代に不可欠なイノベーション

オプレスニク氏は、今回のテーマ「イノベーションによる価値創造」を総括。イノベーションがなぜ必要かを「変動的、不確定、複雑、曖昧なVUCAの時代だから」と説明。

既存ビジネスの成功にあぐらをかくと、新しい市場の創造者が現われイノベーションが起きていることに気づかず、没落します。

「イノベーションは成功のアンチテーゼ」と述べ、音楽業界ではApple iPodをSpotifyが置き換え、宿泊ではホテルをAirbnbが、移動ではタクシーをUberが置き換えている現実をさらしました。

そしてアリババの新CEO、ダニエル・チャンの言葉「既存ビジネスは自分たちで潰さないと、だれかに潰される」(“If we don’t kill our existing business, someone else will.)(記事)を引用。「先駆者になることが重要」「スピードが今世紀の石油」と訴えました。

さらには、マーケティング調査に惑わされずに、顧客が気づいていない問題の本質をスタート地点とすること。目先の利益に右往左往せずに、社会問題に取り組むこと。こうしたマーケティングの洗練により、ウォルマート、パタゴニアなど環境への取り組みに積極的な企業が支持され、植物性肉のBeyond Meatの空前の成功が可能になっている、と解説。

共通価値の創造と、企業の利益は共存する」「ミレニアル世代は、社会的価値がある会社を選ぶ」とまとめました。

ここで会場の聴講者に質問。「CSRレポートを出していますか?」と聞くと半数にも満たない反応。「コンテンツマーケティングを実施していますか?」には、ほぼ挙手がありませんでした。

マーク・オリバー・オプレスニク氏

日本企業のサイロ問題

コトラー氏はこれに対し、「だからブランドアクティビズムが必要なんです。自分、自社が、なにを大切にしているか、を表明すべき」と指摘。

フィリップ・コトラー氏

アーカー氏は、「どの企業にもサイロ(組織の壁)があるが、日本はその傾向が著しい」と述べました。

川上氏はこの点を掘り下げ、

・「日本企業の特徴は分権化、権力の分散

マーケティングでも権限が現場に委譲され、CMOが集中管理していない。CMOが、チーフ・マニュファクチャリング・オフィサーを指す会社があるほど、モノづくりが強い組織。

・「日本ではPRとマーケティングが分断

コミュニケーションも分権化、CSRレポートは広報部が作成。CSRはマーケティングが統括すべき。

と述べました。マーケティングと広報の連携を強化すべき、という指摘です。

コトラー氏は、「CMOのあり方が変わるべき」と提唱。

CEOはCFOと連携し財務情報には明るい。しかし、CMOがCEOと距離があるために、経営者がマーケティングを理解していない、と指摘しました。

川上智子氏

感情に訴える

アーカー氏は、ブランドの物語性(ストーリーテリング)の有効性を説き、「ファクトや解説ではなく、生き方や感情に訴えるストーリーが必要」と力説。ブランドが、

提供するもの(オファリング)

社会価値(ソーシャル)

環境(エンバイロメント)

の3点において、より高次な存在意義(ハイヤーパーパス)を持つべきだ、と強調。

企業はこうした違いを作るグループに報酬を与えるべき。社員はもちろん、経済網を作る供給者(サプライヤー)にも特別手当(ボーナス)を出すべきです」と提唱しました。

デービッド・アーカー氏

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    <午前プログラムレビュー>

基調講演(ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院教授、フィリップ・コトラー氏)
講演(富士フイルムホールディングス代表取締役会長兼CEO 古森 重隆氏、ネスレ日本代表取締役社長兼CEO 高岡 浩三氏)
パネルディスカッション(フィリップ・コトラー氏、高岡 浩三氏、モデレーター:IMD北東アジア代表 高津 尚志氏)

<ランチ休憩>

<午後プログラムレビュー>

講演(カリフォルニア大学ロサンゼルス校ビジネススクール教授 ドミニク・ハンセンズ氏)
パネリスト登壇(ワールドマーケティングサミットグループCEO サディア・キブリア氏)
パネリスト登壇(ネスレ日本株式会社 執行役員コーポレートアフェアーズ統括部長 嘉納未來氏)
パネルディスカッション 「CSV経営とマーケティング」(ドミニク・ハンセンズ氏、サディア・キブリア氏、嘉納未來氏、モデレーター:グロービス経営大学院教授 加治慶光氏)

講演(カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院 名誉教授 デービッド・アーカー氏)

講演 前半 後編(早稲田大学大学院 経営管理研究科教授 川上智子氏)

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