YOLO!夢を追うソーシャルプレナーシップ

YOLO!夢を追うソーシャルプレナーシップ
 
 

ワールドマーケティングサミット東京2019午後一番のパネルディスカッションは「CSV経営とマーケティング」がテーマ。冒頭に、カナダを拠点に人道支援家として活動する、ワールドマーケティングサミットグループCEO サディア・キブリア氏が登壇し、社会起業家精神、ソーシャルプレナーシップ(Socialpreneurship)を紹介しました。

ミレニアル世代が動かす社会

キブリア氏はソーシャルプレナーシップを、「企業が“儲け重視ならびに株主主義”から、“社会的責任を担う商品提供およびステークホルダー主義”に変化するためのイノベーション」と定義しました。

まずソーシャルプレナーシップ登場の背景を説明。社会と未来のための自発的な活動が必要なのは、地球社会と消費者動向が著しく変化しているから、と強調しました。

振り返るとこれまでも、地球的視野で、経済や社会の均衡、自然や環境との調和、平和と未来のための活動が提唱され、日本でもさまざまなCSRが展開されてきました。また2015年の国連サミットでは、持続可能な開発目標(SDGs)が採択され2030年までの国際目標、17のゴールが定められています。(参考:外務省「持続可能な開発のための2030アジェンダ」

この次のトレンドを作っているのが、ミレニアル世代です。キブリア氏は、アメリカで実施されたミレニアル消費者調査をもとに、次世代の消費動向を紹介しました。それによると

・68%が社会に貢献する製品を過去1年内に購入済み


・87%が社会課題の解決支援にあたる会社に好印象


・88%が社会を支援する会社を支持


・87%が社会に貢献する製品を買う


・92%が社会や環境に貢献する会社を信頼

という結果が出ています。

つまり若い消費者は社会や環境への意識が高く、それが消費行動に直結するのです。

さらにキブリア氏は、自身の体験を紹介。「10歳の娘がうちのメルセデスベンツCLS63 AMGを売ってくれ、と言ってきた」「娘いわく、私のベンツは音がうるさい、空気を汚す、高価なガソリン購入は浪費するだけ」「娘は因果応報を信じているからこそ、ベンツに乗るぐらいならスクールバスを選ぶ」。そして「今の10歳児は、贅沢でなく持続可能な製品を選ぶ。うちの場合は、地球にやさしく、スマートかつ快適な電気自動車、テスラを選んだ。それで娘はヒーロー扱いされて喜んだ」という若いミレニアル世代の消費者心理を説明しました。

このように、これまでの起業家精神、イノベーション、リーダーシップを超える挑戦であり、複雑化する環境、拡大する地球的課題に対応する解決策こそが、ソーシャルプレナーシップなのです。「地球と未来を優先する消費者のために、会社や製品そのものが自らケア(大切に)するものを大声でシャウト(主張)する時代だ」と強く訴えました。

おカネを追わずに夢を追うが条件

キブリア氏はソーシャルプレナーの必要条件を

・世界をよくするためにボランティアを実践する


・自分が住む社会を意識する


・人類の幸せ、平和、繁栄を意識する


・自分のビジネスは社会へのインパクトを意識する


・CSRだけでは不十分、自分の製品やサービスは「世界課題を解決する」と明示する

と定義しました。

ソーシャルプレナーシップは、個人、企業、産業界、ブランドの連携により実現します。ソーシャルプレナーの進め方として、

・まず自分から始める


・1対1で広めていく


・同士と集まる


・社会的責任を担うメーカーから買う


・おカネや名声のために働かない、夢や目的を追う(株主からステークホルダー中心へのパラダイムシフトにより利益は後からついてくる)


・人、地球、パートナーをケアする会社のために働く

が定義づけられました。

さらには企業がソーシャルプレナーシップを実践する上で参考になる言葉として、ヒューレット・パッカードの創業者、故デビッド・パッカード「人は企業が金儲けのためにあると思いがちだがそれは違う。人が集まり、一緒だからこそできることを成し遂げて社会に貢献する、それが企業だ」が読み上げられました。

社会実装の事例としては、

・サンフランシスコ空港:ボトル入り飲料水の販売を停止、プラスチックゼロ化(参考:SFO「Plastic Free」)

・カナダの女性安住支援(Women Settlement Organization):暴力に苦しむ8~93歳の女性の生活を支援する政府支援型の非営利組織、運営コストゼロのボランティア運営

といった最新動向を紹介。カナダの女性安住支援はまだ始まったばかり、これから大きくしていく、と述べました。

キブリア氏は最後に「YOLO」- You Only Live Once(人生は一度きり)と掲げ「他人に決して邪魔成されないで!」「世界のすべての人がいつでも笑顔でいられるように!」と述べ、ひとりひとりが自信を持つよう呼びかけました。聴衆を勇気づけるプレゼンテーションでした。

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